JELADO Manufacturing ~Vintage Denim~ Vol.4 「ロマンと科学で紡ぐ"501XX"の遺伝子」

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~「黒タグ」。いざ生産へ~

 

 

国内のデニム産業におけるキーマン、室井さんとJELADO後藤の対談から早数カ月。

(※ふたりの対談はこちらから)

今回はデニム生地”LAST RESORT”の新モデル、通称「黒タグ」の染色工程に同行ができたので、その模様を紹介する。

 

まず、2020年9月にリリースされた301XXに使用された”LAST RESORT”、通称「白タグ」と今回新たに生産する「黒タグ」との違いを整理しよう。

 

 

 

 

ふたつの生地の明確な違いは、ベースとなった501XXの年代にある。「白タグ」はいわゆる「47モデル後期」と呼ばれる50年代のモデルを。「黒タグ」は「47モデル前期」と呼ばれる40年代のモデルをベースにしているのだ。

 

 

共にJELADOが所有するヴィンテージのデッドストックを解体・分析してつくられるわけだが、タテ・ヨコ糸の打ち込み本数、織りは前回と同様。両モデルの具体的な差は紡績(つまり糸)と染色の2点。

(※「白タグ」の製造工程に関してはこちらから)

 

 

紡績の詳細に関しては今回割愛するが、前回よりも「荒々しさ」を表現するためにタテ糸のムラをさらに強くし、染色前の糸への加工はあえて省かれることとなった。

 

 

 

そして、染色。301XXに使用した「白タグ」は色落ちの良さとスピードを意識するカタチで染色工程が設計されていたが、今回はヴィンテージ特有の黒々としたブルーをよりわかりやすく出していくという指針のもと、前回とは違うファクトリーで染色をおこなうこととなった。

 

 

以下、その工程を追う。

 

 

STEP.1 「整経」

紡績ファクトリーから納品された「チーズ」と呼ばれる糸の塊を、約500本の糸からなるロープ状の束にする工程がこちら。なんと、糸のセットは手動でおこなわれ、糸が切れた際は人力で対応するのだとか。この作業を会得するには、約3年の研修が必要だという。

 

 

ちなみに、「白タグ」製造時におこなっていた「湯洗」という糸を洗浄する工程はあえて省かれている。本来、染色を安定させるための前工程をあえておこなわないことで「黒タグ」の目指す荒々しさを表現しようというわけだ。

 

 

STEP.2 「染色」

ロープ状に束ねられた糸は、染色工程へ。インディゴ液に何度も漬けられながら糸は段々と酸化し、青味が濃く変化していく様子が以下の写真を見ればわかるはず。

 

 

糸を液に漬ける回数や、糸の酸化を促すための染色機の高さ、インディゴ液の温度などは企業秘密。今回は「精錬」をおこなっていないこと、さらに糸のムラを強くするためにヨリ回数を増やしたことが起因して、糸に色が入りづらい状態が生まれ、通常よりもインディゴ液に漬ける回数が多かったということだけ、ここに記しておこう。

 

 

染色が完了した糸の断面は以下の通り。熟練の職人たちによる緻密な計算の結果、芯まで染め切らない中白感を生むことに成功している。

 

 

STEP.3 「分繊」

染色が終わった糸は「分繊(ぶんせん)」という工程を経て、ビーム(巨大なボビンのようなもの)に仮巻きされる。ここで糸のテンションをある程度均一化することで、後につづく工程の確実性・効率性をアップさせるのだ。

 

 

STEP.4 「サイジング」

この後、織機にかけられるタテ糸に平滑性を与えるために糊付けをおこなうのが「サイジング」と呼ばれる工程。このタイミングでセルビッジデニムならではの両サイドの白い糸も同時に糊付けされる。ちなみにデニム生地特有の香りはこの工程に由来する。

 

 

サイジングが完了したタテ糸が以下。写真越しに見てもハリとコシが加わっていることがわかるはずだ。

 

 

まとめ

染色を終えた糸は”LAST RESORT”の「白タグ」同様に、豊田自動織機製「G3型」シャトル織機で製織工程に。

 

 

そして、完成した”LAST RESORT”の「黒タグ」がこちら。「白タグ」より生地表面の毛羽立ち、裏面のネップ感、青みの濃さが増していることがおわかりいただけるだろうか?

 

 

JELADOが保有する501XX「47モデル後期」のデッドストックを”LAST RESORT”の「白タグ」を使用して精巧に再現した301XX。そして、「47モデル前期」を「黒タグ」を使用して再現される「301E XX」。

 

 

前者は美しさにコミットし、色落ちの早さも意識したスマートな佇まいのデニムに。後者はより荒々しくヴィンテージ特有の質感を、さらに一段深く追求した荒々しい佇まいのデニムとなっている。

 

 

また大きめのサイズの個体からパターンを採寸したことで、結果として股上が深く現代的なシルエットに仕上がった「301XX」に対して、「301E XX」は32インチの個体からパターンを抽出できたこともあり、股上は浅くすっきりとしたシルエットになるとのこと。

 

 

「301E XX」のリリースは2022年10月予定。

乞うご期待!!

 

 

<文/コボ田形 写真/澤田聖司>

 

 

 

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